高齢者の暮らし

 

 

祖母の家に居候させてもらうことになってから3日が経った。

祖母は一年間だけ社会人をしたのちお見合いで祖父と結婚、その後ずっと家庭を守って来た。

ポジティブな性格で、器用になんでもこなす。歌が好きでよく歌っていた。

孫たちのことを「お客様」として扱うため、お手伝いをさせてくれた覚えはあまりない。してもほんの少しだけだったから、いつも自由に甘やかされていた記憶が多い。

 

そんな祖母も88歳を迎え、徐々に体力は衰えた。祖父の長年の介護のため、脊柱管狭窄症を発症し、今は足の痛みに悩まされている。

コロナ禍となり、その痛みも相まって外出することはほとんどなくなった。

買い出しは兄や母が、そして今は私が担っている。

昔から料理が上手で、祖母の作るご飯が大好きだった。キッチンに立つ祖母の姿はかっこよかった。出てくるご飯はいつも輝いて見えた。

今は立っているのが辛いため、ほとんど作らない。だから食べる量も減って痩せてしまった。

これはまずいと思い、私が代わりにキッチンに立っている。

 

何よりも気になるのは、繰り返される同じ話。親友との電話、祖父との昔話や痛みが辛くてもう死にたいと言うこと。

この3日で何回聞いただろう。でもそれも仕方ないことだ。新しい何かが更新されないのだから。外に出ない、人と会わない、仲の良い友人はたちまち亡くなってしまって、新しいことがめっきり減ったのだろう。そうなったらつまらないと思うのは当然だし、昔のことを繰り返すようになる。

それでも私は祖母にまだ元気でいてほしいし、死にたいなんて思わないでほしい。すっかり元気になったなんてことは期待していないが、少しでも毎日の生活に希望が持てるようになったら嬉しい。

その為にできることを考えてみようと思う。これは高齢者の暮らしを見つめるいい機会だ。それは将来の自分自身を見つめることでもある。

 

その中で忘れないでおきたいのは、同じ話をされても「またか」と落胆したり、イライラなんてしないこと。話半分で聞いていればいいのだ。その話聞いたよなんて間違っても言わないこと。

だって祖母はもう、私に彼氏がいることを忘れて「いい人がいたらお嫁に行きなさいね」なんて言っているのだから。